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うつや不安障害に対する治療の1つである認知行動療法。現在はそれぞれの精神疾患や障害に特化して行うのが一般的だが、異なる診断の背景には共通する病因や症状が見られることから、近年、診断名にとらわれない認知行動療法が注目されている。国立精神・神経医療センター(NCNP)認知行動療法センター部長の伊藤正哉氏らは「感情障害に対する診断を越えた治療のための統一プロトコル」(Unified Protocol;UP)の有効性を検討。通常治療にUPを加えた患者では、より大きな回復が確認されたことをPsychol Med(2022年1月10日オンライン版)に発表した。
通常治療にUPを加えた患者でうつ症状が有意に改善
UPは米・ボストン大学のDavid H. Barlow氏らによって開発された、複数の精神障害に対し診断を越えて適用できる認知行動療法である(図1)。図1. 各障害に対応した認知行動療法(左)と、診断を越えた認知行動療法(右)
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しかし、うつ病患者に対するUPの有効性に関する研究は多くなかった。そこで今回、伊藤氏らの研究グループは、うつまたは不安障害に対するUPの有効性を検討した。
対象は、うつ病や不安障害〔広場恐怖を伴うパニック障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)など〕でNCNP病院に外来受診している成人104例。通常の治療を続ける群(通常群)52例と、通常治療に加えてUPを行う群(UP群)52例に1:1でランダムに割り付けた。主要評価項目は21週後の17項目版のGRID-ハミルトンうつ病評価尺度(GRID-HAND)スコアで、副次評価項目はハミルトン不安尺度のための構造化面接ガイド(SIGH-A)、臨床全般重症度(CGI-S)や臨床全般改善度(CGI-I)のスコアなどであった。
線形混合モデルを用いた解析の結果、21週時のGRID-HANDスコアはUP群で有意に低かった(図2)。
図2. 通常群とUP群のGRID-HANDスコアの変化
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(図1、2ともNCNPプレスリリース)
SIGH-AとCGI-S、CGI-Iのスコア変化においても両群に有意差が認められ、UPの有用性が示された。また、対象の半数以上が複数の精神障害を併存し、治療期間が長かった(平均値7.8年)ことから、重篤な症状を長期間有する患者にもUPが有効である可能性が示唆された。
今後の展望について、同氏らは「UPで回復が見られた者とそうでない者を分ける要因を明らかにし、個々にUPを最適化する研究や、効率的に提供する方法を検討したい」と述べている。
参照: https://medical.jiji.com/news/50373
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