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「抗うつ剤にはデメリットが多く医師は処方量や処方期間を減らすべきではないか」と研究者が主張
近年はうつ病が世界的な問題となっており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でさらにうつ病が増えていることも報じられています。多くの医師はうつ病の患者に対して抗うつ剤を処方しますが、複数の研究結果をレビューした研究者らは、「抗うつ剤の長期服用はメリットよりもデメリットが大きい可能性があるため、医師は抗うつ剤の処方量を減らすべき」と主張しています。
うつ病の人に対しては抗うつ剤が処方されることが多々ありますが、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの精神科医であるマーク・ホロヴィッツ博士とロイヤル・コーンウォール病院で薬剤師として勤務するマイケル・ウィルコック氏は、「抗うつ剤の効果については、短期的にも長期的にもかなりの不確実性が存在し続けており、特に抗うつ薬治療とプラセボ治療の間に臨床的な差が欠如しています」と述べ、メリットとデメリットのバランスを踏まえて、抗うつ薬の処方について考え直す必要があると主張しています。
そんなホロヴィッツ氏らは過去の研究について体系的なレビューを行うという調査を実施し、「抗うつ剤の効果について調べた臨床試験のほとんどが、6~12週間という比較的短い期間の有効性しか見ていない」という点が問題だと指摘しています。現実的には多くのうつ病患者が数カ月~数年という単位で抗うつ剤を服用しているため、臨床試験は抗うつ剤処方の実態にそぐわないものだとのこと。
さらに懸念される点として研究チームが挙げているのが、ほとんどの研究では単にうつ病の症状についてのみ調査し、最も重要な「生活の質」を見ていないというものです。研究チームは論文の中で、「(パキシルやルボックスなどの)一般的な抗うつ剤である選択式セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を服用する患者の約20%が、日中の眠気や口内の渇き、多量の発汗、体重増加などを報告します。約25%は性的機能不全を報告し、約10%は焦燥感、筋肉のけいれんや引きつり、吐き気、便秘、下痢、めまいなどを報告しています」と指摘しました。さらに、抗うつ剤の長期使用者による副作用の自己評価を分析した研究では、71%が感情のまひ、70%が思考に霧がかかったような感じや孤立感、66%が性的機能不全、63%が眠気といった副作用を報告したとのこと。
研究チームが着目した別の問題には、「抗うつ剤の長期使用は10代から始まることも多い」というものがあります。抗うつ薬が10代の若者にとって効果的との臨床的な証拠はほとんどないものの、現実には抗うつ薬が思春期の少女が最も多く服用する薬物の1つとなっており、抗うつ薬を処方される12~17歳の子どもは各国で急増しています。
SSRIに関する2017年のメタ分析では、ハミルトンうつ病評価尺度を使用して被験者の症状を0~52の範囲で評価したところ、抗うつ剤を服用する人と偽薬を服用する人の間に2ポイントの差しか見られないことが判明しました。
これに対し、英国国立医療技術評価機構は臨床的な違いを生み出すには少なくとも3ポイントの差が必要だと述べており、別の研究では7ポイントの差が必要だと主張しています。つまり、現代の抗うつ剤が生み出す2ポイントの差では、十分な効果があるとは言えないというわけです。
また、研究チームは抗うつ剤の服用をやめた際にみられる離脱症状についても調査を行っています。イギリスの王立精神科医学会が発行するガイダンスでは、抗うつ剤の服用をやめた患者には頭痛・不安・不眠・興奮・疲労・下痢などの離脱症状が出る場合があると記されています。
研究チームは、抗うつ薬による離脱症状は以前認識されていたよりも一般的であり、より長期的かつ重度であるという認識が広まっていると指摘。離脱症状を避けるには徐々に服用量を減らす必要がありますが、徐々に服用量を減らしたとしても長期的な離脱症状を避けられる保証はないとのこと。また、抗うつ剤の服用量が多すぎる場合には徐々に減薬するのが難しいという問題も研究チームは指摘しました。
今回の研究結果を受けてただちに抗うつ剤の処方をストップするのは不可能であり、最終的な決定を下すにはより多くの研究が必要です。しかし研究チームは、各国で行われている抗うつ剤の積極的な処方がデメリットをもたらす証拠が増加しているとして、「一部の患者が抗うつ剤をやめるのに苦しんでいるという認識の増加は、より抗うつ剤を処方する患者と服用期間を減らす、慎重な処方慣行につながるべきです」と結論づけました。
参照: https://gigazine.net/news/20220129-prescribing-antidepressants-harm-concerning/
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