ずっと死にたがってきた。
でも、死にたくなんかなかった。
楽に、なんの心配事もなく、天国で生きられるなら、それでよかった。
私は今日、「私」を失う。
「私」が築いてきた物も、大半が失われるだろう。
物。友人。信頼。家族。数え切れないものを失ってきた。
死んだ瞬間に失うものよりも、よっぽど多いだろう。
もう、失うために生きるのなんて懲りごりだ。
これ以上、大切なものを失わない方法。
それは、大切なものを得ないこと以外にない。
生きるのは大切なことだ。だから、生きている限り、大切なものは勝手に私の中に入ってくる。
終わるのか。この人生が。私にとって、全てとも呼べるこの世界が。
嫌だ。
そんなの受け入れるつもりなんかない。
この15年をふいにして、何もかも失って生きるくらいなら死んだっていい。
でも、どうせ死ねない。
だったら、なんとしても阻止する。「私」を、守り抜いて見せる。
「私」が積み上げてきた全ては、私の手で守ってやる。
失わないために、守るんだ。
これは、自殺未遂“未遂”者の、最後の意地だ。