詩「この世界」
一度は聞いたことがある
「隣人は今日も死んでいる」と。
一度は聞いたことがある
「隣人はまともな飯も食えていない」と。
一度は聞いたことがある
「隣人は生きたくとも生きられぬ」と。
誰からも聞いたことがない
「あなたは頑張って生きている」と。
誰からも聞いたことがない
「あなたのご飯の心配はしなくていい」と。
誰からも聞いたことがない
「あなたには死んで欲しくない」と。
いつだってこの世界は
遠くの景色と、足元の泥とを比べたがる。
見えないだけで、遠方にも汚泥はあるだろうに。
いつだってこの世界は
自らの不幸は、隣人にも不幸だと思い込む。
幸せを決めるのは、自分自身なのに。
何もわかっていないのに
わかったように生きていく。
生きなければならない。
それがこの世界。