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船に揺られているようで足元が頼りない。同じめまいでも目がぐるぐるするのとは違い、「浮動性めまい」と呼ばれる。原因は様々で、近年新たな分類が加わった。深刻な病気が隠れている例もあり、注意が必要だ。
めまいは大きく2種類に分けられる。ぐるぐると目が回る「回転性」、そしてふわふわと体が揺れるように感じる「浮動性」だ。日本赤十字社医療センター(東京・渋谷)耳鼻咽喉科の物部寛子部長は「現場で患者をみていると、浮動性めまいを訴えるケースが回転性の2倍くらい多いように感じる」と指摘する。
浮動性めまいは原因がわかりにくい場合が多い。帝京大学医学部の室伏利久教授(耳鼻咽喉科)は「(耳の奥で重力や体の傾きを感知する)耳石器の異常や腰椎の病気、うつ病・不安障害など心因性のもの、薬の副作用による低血糖でも起こる」と話す。慢性化する場合も多いという。
慢性的なめまいのひとつとして近年新たに国際的な学会で定義されたのが持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)。新潟大学で症状が3ヵ月以上続くめまい患者238人を調べたところ、4割が当てはまった。最初に強いめまいが起き、その後も浮動性めまいが長期間続く。体を動かしたり、動きの激しい映像を見たりすると起きやすい。
人間の体は耳の前庭(耳石器)、体の回転を感知する三半規管に加え、視覚、皮膚や筋肉などから得られる情報(体性感覚)も活用しながらバランスを取っている。新潟大学の堀井新教授(耳鼻咽喉科・頭頸(けい)部外科学分野)は「内耳の障害をきっかけに、視覚や体性感覚が過敏に反応するようになると考えられる」と解説する。
発症するのは50代を中心に20代から80代まで幅広い。特に不安気質の人に起こりやすいという。「放置していては治らず、悪化する例が目立つ」(堀井教授)のも厄介だ。
浮動性のめまいの治療にはいくつか方法がある。まず考えられるのが薬物療法だ。抑肝散(よくかんさん)や半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)といった漢方薬が使われるケースが多い。PPPDには抗うつ薬も活用される。
体を動かしながらものを見るといった訓練を通じて前庭の調子を整える「前庭リハビリテーション」もある。物部部長は「特に高齢で浮動性めまいがあるときはよく歩くのが大切。家にこもっていると筋肉や感覚器が低下し、悪化する」と助言する。
パニック障害や不安症の患者に用いる認知行動療法も選択肢に入る。対話を通じ、過剰にめまいを意識しないですむように行動の変化を促す。
室伏教授は「慢性めまいがあるときはとにかく医療機関を受診してほしい」と語る。深刻な病気がみつかることがあるからだ。例えば「小脳・脳幹梗塞で浮動性めまいが起こりうる」(室伏教授)。立てない、顔がしびれる、ろれつが回らない、などの症状もあれば可能性が高まる。
一方、回転性めまいの場合、原因の多くは三半規管にある。三半規管に異常が起こると、じっとしていても回転しているような感覚になる。
とりわけ多いとされるのが良性発作性頭位めまい症だ。耳石器では中にある「耳石」が体にあわせて動いて感覚細胞を刺激し、体の傾きを認識している。その耳石が何らかの原因で耳石器からはがれ、三半規管に入ることで感覚が混乱してしまう。
他にも耳の奥のリンパ液が増えすぎて三半規管を圧迫するとメニエール病になる。原因が明確にわかるため、浮動性めまいに比べると、治療の方針がたてやすい。
日本めまい平衡医学会のサイトではめまいについて相談できる医師を紹介している。気になるときは受診しよう。
参照: https://style.nikkei.com/article/DGXZQOKC111PS0R10C22A1000000/?page=2
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